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マツにまつわるエッセイ

人に歴史あり、猫にも歴史あり。マツとの日々がくれた喜怒哀楽のこぼればなしを、どうぞ。
※一部、ねこ日和と内容が重複しております。
 その部分はタイトルだけで表記しました。あしからず

 

恐怖のダイエット作戦

マツがチビだった頃

マツの散歩道


 

マツとの出会い ●憧れの猫との共同生活飼い主失格? ●命名・マツモト

「マツ」の意味 マツ・イリュージョン? ●キャッチボール ●ボンボンねこじゃらし

警察犬ごっこ ●ポルターガイスト 二度寝の幸せ 術後のホルモン異常

●外ねこにしない理由(ワケ)
 私は、猫を飼ったら室内飼いにしようと考えていました。だから、マツに脱走される度に必ずマツを捕獲しました。会社を遅刻し、時には昼休みに戻ってまでして・・・。私がマツを外に放したままにしなかったのは、長生きしてほしかったから。野良猫の寿命は約3年と聞きます。食べ物不足、不衛生な暮らし、交通事故、他の猫とのケンカによるケガと病気の感染、心無い人からの虐待の危険など、環境が苛酷だからです。放し飼いにするということは、愛するマツを同じ状況にさらすこと。だから、脱走され、ほんの数十分姿を見失うだけでも心配で、心配で!つい過保護にしてしまいました。

●歩き始めた理由
 室内飼いにする一方で、マツをリードつきで散歩させるようになったのは、ズバリ!私が猫と散歩がしたかったから。ドライブの時は後部座席で寝ていて、目的地についたら私と一緒に歩く。私が一緒なら、どこでも平気。そんな猫になってくれたらいいのにと、思ったわけです。そこで、屋外に慣らすために、リードをつけて散歩するようにしたのです。もちろん、初めはおっかなびっくり。でも、しばらくすると、縄を抜けては脱走!外出・帰宅した私の足元をすり抜けて脱走!と、お外を探検するのが大好きな猫になってしまいました。

●リード選びのコツ
 マツが使っているリード(胴輪)は、子犬用です。猫用のリード(胴輪付き引き綱)も売っているのだけれど、マツは只今8kg。MAXで9.4kgあったので、仔猫の頃に飼った猫用リードは使えなくなってしまったのです。また、猫用リードは組紐状で、猫の滑らかな猫背を駆使されると、するりと抜けられてしまうのです。そこで、私は子犬用リードでガッチリとマツの体をホールドしています。不要となった仔猫時代のリードは、現在、引き綱として利用しています。私の手にもぴったりフィットでお気に入りです。

●ねこと散歩する術
 犬用リードを使っても、猫との散歩は犬のようにはいきません。猫の散歩は、走ったかと思ったら立ち止まり、いつまでも臭いをかいでいたかと思ったら走り出し、止まったかと思ったら、目の前の壁にジャンプしている。そんな気まぐれなものです。だからと言って好き放題させていると、側溝の中とか、茂みの奥とへ入って行ってしまうので、私は「人の通れないところは歩かない」ということを教えました。方法は簡単!マツがその手の道へ行きかけたら、「行けない!」と言いながら、体にガンと衝撃が伝わるよう綱を引っ張るのです。

●男嫌い
 マツは、物心付いた時から私と2人きりで生きてきました。そこで、女性は得意ですが男性は苦手です。ある時、私の友人でいつも男に間違えられるほどボーイッシュな奴が遊びに来たのですが、マツはその姿を見るなり天袋へと逃げ込んでしまいました。猫好きの彼女が、
「何を恐がってるんでしゅか、マチュ」(訳:何を恐がっているんですか?マツ)
 と声をかけると、
「なんだ、女か。でも幼児言葉は嫌いなんだよな」
 といった微妙な表情で降りてきました。しかし、男性でも得意な男性がいるのです。それは、私の家族です。マツは私の父、弟が来た時は、女友達が来た時同様、普通の顔をしてそこにいます。が、父は動物好き&悪ふざけが好きで、たまにいじめられる(毛が抜ける前に抜いてやるとガムテープを貼ったことがある)ので、ちょっぴり警戒はしていますが…。

●マツの野生が目覚めた時
 私はある時期、事情があって一人暮らしをしていた弟の家に居候していたことがありました。弟が借りていたアパートの1室・4畳半を間借りし、家財道具一式を押入れに詰め込み、押入れの一角にはマツのキャリーバッグを設置して。マツは部屋の隅に積み上げられた段ボールを上手に足場にして、そのキャリーバッグの中に飛び上がり眠っていました。
 その家に行ってから、私はマツとの散歩を復活させました。前の家はペット不可の高層マンションの13階で、1階には管理人さんもいたため、お散歩ができなかったのですが、ここはボロアパートの2階。今にも手に届きそう地面が眼下にあるため、マツも
出たくて出たくて鳴きわめくので。
  お散歩が再開できるようになったとき、驚くことが起きました。マツが、植木の臭いをしきりにかいだ後、お尻を高々とあげて、その木に向かっておしっこをかけたのです。マツは生後半年ほどで虚勢をしたため、スプレーもしたことはありませんでした。私は、マツの中に眠っていた野生を見せられた気がして感心すると同時に、そういう力を封じ込めてきた自分を、申し訳なく思ったのでした。この時ばかりは謝りました。マツごめんね。

●猫をかぶる猫の誕生
 お散歩ができるようになってからのマツはどんどん野性味を増し、ヒマさえあれば散歩に行きたがり、野良猫とケンカしかかって私をひっかいたり、たまにお風呂場の窓から脱走して私を悩ませたりしました。私は、マツの気を散らそうと、散歩の回数を増やしました。ところが、それが運のつき…。お散歩している姿を大家さんに見られ、弟が怒られてしまったのです。弟の借りていたアパートはペット不可。弟の弁明も歯が立ちませんでした。私は、しかたなく、マツを実家に預けることにしました。
 実家は、これまた高層マンションの11階。お散歩はできなくなりましたが、眼下を時折電車が走っていくので、面白いようです。私は、時々電話を入れました。
「マツは元気にしてる?食べてる?」
 父は甘やかして、かつおぶしをあげまくっているようで、母は自分の布団に入りたがるし、お膝に乗って離れないと嬉しそうです。テーブルには上がらないようしつけてあるのも喜ばれました。私は、いても立ってもいられず、その週末、実家へ帰りました。マツは母の膝の上に丸くなっていました。が、マツは私を見るなり、
「うわ、まずいとこ見られた!」
 とばかりに、母の膝から飛び降り、私のところへやってきたのです。そして、腕に抱かれると思い切り甘えた声で鳴き、ブヒブヒと鼻を押し付けてきました。その晩は、マツは私の懐で眠りました。
「あんたが来ると、私には寄り付きもしないなんてゲンキンね!」
 と母は憤慨していました。が、私は悩んでいました。私のために、住むところの定まらないマツがとても不憫だったからです。その点、実家なら引っ越すことはないし、きれいだし、甘える人もいて、大好物を食べさせてもらえて何の不自由もないし、優しい父と母がうんとかわいがってくれるし、ここで暮らしていくことの方が幸せなのかもしれない…。
 そう思ったとき、ふと、マツの背中が目に入りました。なぜか背中の毛が立っているのです。寝癖かと思い、何度か撫でてみましたが立ったままでした。マツは、リラックスしているかのようにみえたけれど、実は、そうではなく、猫をかぶっていただけだったのです。

●マツと暮らすための家
 マツのためには実家で可愛がってもらう方が幸せなのかもと悩んでいた私は、マツの背中の毛が立ったままなのを見て、マツが実家で決してリラックスしているわけじゃないのだと知り、マツは私を慕っていてくれるんだと悟り、貧乏でも、ボロ家でも、生活スタイルを変えなければならなくても、マツは私といることが幸せなんだと確信し、マツと二人で生きていこうと決意しました。そこで、大慌てで生活を立て直し、マツを迎えるにふさわしい住まいを探しました。今度こそ、ペット可で、マツと散歩できる場所が近くにあって、長く住める場所を…。
 こうして探し当てたのが現在の家です。ここは、ペット可のマンションで、敷地内にはちょっとした散策道があり、築年数が古いため私にも維持できそうな低目の家賃で、部屋数は3DK。ベランダにも出られて十分走り回ることができます。また、天袋に飛び乗れるよう、手前にタンスを置いてあげました。もちろん、この家は私にとっても快適でした。南に2部屋あり、10階なので、始終南の窓を開放しておけば、部屋中に風が渡ってとても清々しいのです。当時、車の免許のなかった私にとっては、駅から近いのに築年数が古いため家賃が安いというのも魅力でした。こうして、
「これでマツとの蜜月の時が過ごせるなあ」
 と父が揶揄した、私とマツの新生活がスタートしたのでした。

●高所恐怖症?
 新生活の中で、マツに一番に覚えてもらったのは、この家が高層階にあるということでした。以前、マンションの13階に住んでいた時、マツがベランダの外へ向かってジャンプしようとしたことがあり、
「マツ、ダメ!!」
 と叫んで止めたことがあるのですが、もし、マツがベランダにやってきたスズメを取ろうとジャンプなどすれば、落下して天国へ行ってしまう可能性があるからです。私はマツを抱っこして、ベランダの外側を見せました。マツは私にしがみつき、挙句の果てには部屋に戻ろうと必死で私の腕を振り切ろうとしました。これで、OKです。が、あの恐がり方を見ると、どうやらマツは高所恐怖症なのかもしれません。と言っても、天袋は好きなようですが…。

●帰巣本能
 私の家は、12階建てで数百世帯が住むマンションです。おまけに、スキップフロアというのか、エレベーターの止まる階と止まらない階があり、使用する階段を間違えると、目的の家にいけないという少し前に流行った方法で防犯性に配慮したマンションでした。それは、万が一、マツが脱走すれば間違いなく迷子になるつくりでもありました。
 私はお散歩に出る際、家の中でリードをつけ、玄関を出てエレベーターの止まる階まで階段を上がり、通路を渡ってエレベーターに乗っていました。帰ってくる時は、その逆です。ある日、見知らぬおじさんに驚いたマツが、リードを引き抜き走り出してしまいました。
「こりゃ、探すの大変だぞ!」
 と困っている私を尻目に、マツは一目散に廊下を走り、私達が降りるべき階段を降り、私達の家の扉の前で待っていたのです。どうやら、毎日同じコースで散歩を繰り返す内に、家の位置を覚えたようです。 またある時、マンションの1階から階段を登って来たマツが、疲れたらしく、とあるドアの前に止まって
「にゃー」(あけてくれ〜)
 と鳴きました。それは、私の家のあるフロアと同じつくりのフロアで、私の家と同じ位置にある扉の前でした。マツには一応、帰巣本能があるようです。

●人の幅に配慮する猫
 毎日のようにリードでお散歩をし、歩いてほしくない場所へ行ったら綱をガンと引っ張ると同時に「行けない!」と言っていると、マツは私が通れなさそうな場所は避けて歩いてくれるようになりました。その学習能力の高いこと!ある日、他所の猫がマツの目の前に飛び出て、茂みの奥へ走って逃げたのです。私は、マツが後を追った時のことを考え、綱を握り締めて身構えたら、な、なんと!マツは、わざわざ人用の散策道を走って茂みの裏が見える場所まで移動したのです。おかしいやら嬉しいやら、でした。

●ワイルドムスク
 マツとの散歩で、困ることが2つあります。そのひとつは、砂埃がたまっている場所で、体をスリスリしたがること。ちょっと目を離した隙に、シャンプーしたての真っ白のマツが、砂埃まみれの野良猫に変化していた時には、がっくりです。マツはというと、シッポをブンブン振ってワイルドな自分にご満悦。そこで、砂埃を「ワイルドムスク」と呼ぶことにしました。また、ワイルドムスクをつけたがる時は、側に他所の猫の気配があるときでもあり、困ることその2に該当する「他所の猫とのケンカ」に注意が必要です。

●飼い猫に噛まれる(?)
 マツは兄姉と3匹で捨てられていたので、猫の礼儀を知りません。挨拶の仕方も、他所の猫にあったときの対処方法も。そこで、他所に猫がいるとケンカをしかけたがります。一番驚いたのが、ペルちゃんとの一騎打ち。マンション脇のフェンスをかけのぼり、ベランダから下を見ていたペルちゃんに向かって猫パンチをした日にゃ、飼い主の私も真っ青です。その後、フェンスの向こう側へ落ちてしまったマツを助けようとして、私も噛まれました。噛まれた腕は傷が化膿して腫れ上がって曲がらなくなるほどで、1週間ほど治療が必要でした。そして、治ってきた矢先に、また噛まれてしまいました。散歩の途中、おじさんに驚いているマツを抱いて安心させようと近づいた際、誤って尻尾を踏んでしまったのです。立て続けに猫に噛まれては通ってくる私に、外科の先生も苦笑していました。「飼い犬に噛まれる」人はいても、飼い猫に噛まれた人は私くらいだったのでしょう。

●おきみやげにご用心
 ペット禁止高層マンションに住んでいた頃、脱走したマツが他の住人に見つかり捨てられるという事件が起きました。帰宅後、驚いて探しに出るとマツはすぐに物陰から現れ、家に帰ると真っ先に、おしっこをしました。それまで、外でしたことがなかったため、1日我慢していたようなのです。今はペット可の住まい。外でマーキングもどきもできるようになったマツを、私は感慨深く眺めていました。ところが、その日は大きな置き土産(うんこ)までするではありませんか!以後、マツとの散歩には汚物用ビニール袋も欠かせなくなりました。

●散歩で退屈しないために
 マツとの散歩で、マツの気まぐれに付き合うのは退屈なことでもあります。私は春・秋など、気候のよい時は文庫本を片手に付き合います。最近は、マツが立ち止まっている隙に体操をして時間をつぶすことも。でも、本気で付き合ってみると、思いがけない発見もあります。マツがフンフンとあたりをかいでいるのをまねてみると、どこからか生魚と土が混ざったような匂いが漂って来ました。次の瞬間!マツが駆け出し、その前足の先から、するりと逃げるトカゲの姿が!以来、私もトカゲの出現が匂いで分かるようになりました。

●セミ、テイクアウトで
 夏、わが家のベランダにはセミが飛び込んでくることが多く、毎年、何匹のセミをマツとチャミの猫パンチから救い出せるかが、私の課題になります。マツは散歩に出かけている間に、セミやトカゲを捕まえることがあります。と、どうするか。マツはパクッと獲物を口にくわえ、一目散に家の方向へ向かって歩き始めるのです。でも、わが家はマンションの10階。マツにエレベーターが使えるわけもなく、扉を開けられるわけもなく…。家に戻る前に、マツの口から、いかにセミやトカゲを救い出すかが私の課題になります。

●マツの散歩をやめられない理由
 マツとの散歩は、毎日約1時間。それこそ、雨の日も、雪の日も。多い時は朝・夕方1時間ずつ歩いていました。私がお散歩に連れ出してあげるまで玄関で鳴き続けるため、出ずにはいられなかったからです。でも、これが裏目に出ることもあります。真夏や冬の日の陰ってきた時間帯の散歩は、心臓の負担になるからです。ひどい時には、道端にへたり込むことも。そんな時は抱き上げて帰るのですが、身をよじって逃げようとします。どんなに調子が悪くても、マツのお散歩好きは誰にも止められません。

●お気に入りスポット
 マツの散歩コースには、いくつかのお気に入りお立ち寄りスポットがあります。まず一つ目は、アジサイの根元。どうやら他所の猫のマーキングポイントらしく、散々臭いを嗅ぎまわってから自らの放尿で清めて(?)います。一番困るお立ち寄り箇所が、前日猫と遭遇した場所。同じ場所にいるはずもないのに、念入りに、それこそ念入りに臭いを嗅ぎ、少し離れてはまた戻ってしつこく臭いを嗅ぎ、付き合いきれないほど丹念に臭いを調べます。そこで、抱いてムリヤリその場を離れることもあります。

●野良猫には巻かれる
 散歩の途中、マツの念入りな臭いチェックのおかげで、よその猫に遭遇することもしばしばです。が、マツの態度を見ていると、相手が飼い猫か、野良猫かの違いは歴然です。なぜなら、マツは飼い猫には尻尾をブンブン振って、うなりながらケンカをしかけようとするくせに、野良猫となると何も見なかったかのようにすごすごとその場を去るからです。私から見て、相手が野良猫か、そうじゃないかは毛並みでしか判断できませんが、猫たちの間では、複雑なやりとりがなされているのでしょう。

 


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